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今回はよくある合併症だけど、見過ごされがちで自分でちょっと気をつけていれば早期に発見できる内容に絞ってお話します。
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スライドは下肢を切断された透析患者さんの写真ですが、今、全透析患者の2%で肢切断が行われています
。
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これは年次別の透析患者さんの総数です。年々患者さんが増加しています。
赤は糸球体腎炎、黄色は糖尿病由来の腎不全患者さんの数ですが、このように現在では糖尿病由来の透析患者さんが増加しています。
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さて、糖尿病が下肢の合併症、壊疽に関してどうして不利かといいますと、スライドにも示しましたように
まず、動脈硬化による下肢の動脈の閉塞が多いということです。さらに神経障害、自律神経では汗が減り
肌に潤いがなくなり、水虫や亀裂が多くなります。また、知覚障害で熱さが分からずやけどしやすくなるということが考えられます。
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さらに、これは糖尿病に限らず、リンの存在があります。
リンは高くなると異所性石灰化といって血管の中に溜まり、血管を閉塞します。
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これは足の血管の解剖ですが、上は大腿動脈、下はひざの動脈、さらに末梢では足背動脈がよく話題になります。
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さて、先ほどの血管にリンが石灰化して沈着すると右側の血管のように内腔は古い水道管のようにボロボロになります。血管造影やMRIでこれらの病変はこのように診断されます。そして放置されると血管は閉塞しこれからお見せする悲劇が始まるのです。
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以下は兵庫医大皮膚科の伊藤先生のご好意で提供して頂いた症例です
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これらはほうっておくと大変なことになった例です。
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それではこうならないためにはどんな注意が必要でしょうか?
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まず、全身状態の管理が重要となります。
糖尿病の方は糖をきっちり管理して糖尿病の管理をすることが重要ですし、そうでない方も
Pの管理や水分管理が重要です。
足そのもの局所管理ではスライドに示したことが重要です。
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でも、その下肢病変に気づくのは
下肢病変に気づくのは、医師ではないかもしれません。
身近にいて、患者さんがちょっと話せるのは、医師でない様な気もします。
ちょっと靴下を取って、足をさわるのも医師以外だったりして・・
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というわけでどんな病変に注意すればいいか具体例をお見せしていきます。
これは右がひび割れ、左がまき爪です。
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右は爪の水虫、左が水泡、みずふくれです。
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爪水虫のひどくなったものです。これらは隣の足の指を傷つけることが問題なんです。
これらは皮膚科でこんなによくなります。
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これはお布団ですった傷がもとです。
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たこです。これらも下図のように皮がめくれると、いつでも感染の危機があります。
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低温やけどです。くつのなかのカイロはやめましょう。
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さて局所管理でしてはいけないことです。スライドにあることに注意しましょう。
爪はスライドのように水平に切って深爪しないことが重要です。
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靴の選び方の基本です。
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次は自分でできるシャント管理についてお話します。井上病院のご厚意のよるスライドが多く含まれてあります。
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さて、シャント側の手が張れてきたらシャント中枢側の閉塞のサインです。中枢に流れが悪くなると
このように末梢に余分な血液が流れ手がはれます。これをソアサム症候群といいます。
ソアは痛い、サムは親指という意味です。
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さて、こういう場合の血管造影の典型例です。
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次はもう少し中枢の鎖骨の静脈が閉塞した場合です。指だけでなく、上肢全体が張れています。スライドではわかりずらいのですが、こういう場合、胸の静脈も浮き上がります。
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右側の矢印が閉塞している血管ですが、これをPTAという手技で膨らませると左のように血流は改善します。
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これは比較的よく見られるシャントのコブです。医学的にはシャント瘤といいます。
直径2Cm以上で,皮膚のみがつかめない.場合は破裂の予兆で注意すべきです。
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なぜこういうコブができるのかというと、色々な原因がありますが、どれが正しいというものはないようです。
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破裂の危険のあるコブはスライドのように手術で取り除きます。
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次はシャント閉塞です。閉塞のサインの4つを覚えておきましょう。
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むかしはシャントが閉塞すると、手術で再建していましたが、今はPTAといい、風船で閉塞した部位を膨らませるのが一般的です。手術ではそのたびに血管がなくなります。血管を大事に扱うにはPTAが優れています。血管造影で閉塞した血管がPTA後にきれいに流れているのがわかります。
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次はスチール症候群です。さきほどのソアサム症候群のように手が腫れるのですが、ソアサムより手の色が悪いという特徴があります。
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原因は本来指先へ行くべき血液がシャントの吻合口(動脈と静脈をつないだ部位)が大きいと血液がシャントにのみ流れて指先へ血流が流れないことにあります。
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治療はこれはシャント再建が最もよいと考えます。
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つぎは手根管症候群についてお話します。写真提供は山口県 たはら整形外科 多原 哲治先生、
青森県 本田整形外科クリニック本田 忠先生の御厚意によるものです。
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現在の血液透析では分子量が大きくて透析で体内から除去できないものの1つにベーター2マイクログロブリンというたんぱく質があります。このたんぱく質はアミロイドというものになり腱や骨、心臓などに沈着して様々な合併症の原因になります。このアミロイドが手首の神経が通る手根管にたまり神経を圧迫するのが手根管症候群です。
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手根管を通る神経は正中神経といい、運動、知覚療法を司る重要な神経です。正中神経は親指から3番目の指半分の知覚を支配しますのでこの領域にしびれが生じます。
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さらにスライドに示したようなサインが出現します。放置しておくと運動神経も侵され、指が動かしにくくなります。
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治療は圧迫されている神経を開放してやることで、手根管開放術という手術がメインになります。
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むかしは手のひらの皮膚を大きく切って行われていたのですが、今は内視鏡を用いて小さな傷で手術は終了します。
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内視鏡手術後です。傷はほとんど分かりません。
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つぎはバネ指です。これもアミロイドが原因です。
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ゆびを動かす腱は通常腱の鞘、腱鞘で保護されていますが、腱鞘にアミロイドがつくと腱は動かしにくくなります。
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曲がりにくく、無理に曲げると今度は伸ばすことができなくなります。
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よく起こる部位です。
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治療は腱切開で腱を開放することです。
よく遭遇する合併症のほんのさわりのみお話させて頂きました。明日からの皆さんの合併症の早期発見にお役に立てれば幸いです。